last steam
「ゆっくり体が動かなくなるわ」男は立とうとするが
力が入らないらしい
麻痺しているのだろう
「てめぇ、ぶっ殺してやる、、」
女はすくっと
立ち上がり
男の言葉を無視して
浴室のコントロール・パネルのところへ
向かった
「設定温度 ジャグジー スチームサウナ」
項目の中から
スチームサウナを押し
設定温度を
最大にあげた
女は
出てくる蒸気を
見て
軽く口元に
笑みを浮かべた
「じゃあね
こんな死に方できるあなたは
意外に幸せものなのかもね」
女はそういって
浴室の外に出た
服を着て
タバコに火をつけた
「お帰りー」
少女は
主人を待ちわびていた
ペットのように
女に飛びついた
女はひざ辺りに来た
少女の頭を撫でながら言った
「ごめんね~すぐ、ご飯にしようね」
女はそういうと
ハンドバッグをソファーになげ
スーパーの袋を
台所の上に置いた
「ねぇ、お母さん、今日はお肉なんでしょ?
なんだかもう良い匂いがするよ?」
少女のまっすぐな瞳を
女は見つめ
そして言った
「そうよ、今日は
いい燻製のお肉が手に入ったの」
そういって女は
少女の目の高さからは見えない
俎板の上に
スーパーの袋に包まっていた
哀れな燻製の肉塊を
ドサッと置いた


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