step 2
俺の顔を見つめてくるだけで特に何かをしてくるわけではないので
言葉を投げてみた
「あの~、、こんばんわ?」
引きつる笑顔で
相手の反応をうかがう
その間俺の体はまるで
金縛りにあったように動かない
タバコがだんだんと短くなり
灰が少しずつ夜風にさらわれて
5階の高さから
夜光の渦に消えていく
自由が利くのは
眼だけだった
首も固まってしまい
俺を見据える顔から
眼をそらしたくても
そらせなかった
ただ、眼をつぶることは出来た
・・・
俺の言葉に反応する気配は無く
暗く淀んだ窪みの中にあるであろう
瞳が俺の
顔全体を
分析するように
また嘗め回すように
見ていることは確かだった

「あの~、、どういったご用件で?」
俺は悪意がないのを感じ取ると
少し心に余裕が持てた
こんな言葉が俺の口から出たのは
自分でも予想外だった
・・・すよ・、、、
微かな声だったけれど
確かに表情のない顔が
俺の言葉に反応した
そのとき
風が急に強くなった
生ぬるい夜風が
タバコの灰を
俺の目に投げ入れた
いてっ
俺は瞬間的に目をつぶった
次の瞬間
体の硬直は解け
俺は右手で
眼を擦った
眼を開けたときには
それはもういなく
ただただ
短くなって
火がフィルターにまで達して
不快なにおいを漂わせる
タバコと
さっきと変わらぬ生ぬるい夜風が
俺の体を撫でて行くだけだった
戻るか
タバコを足で踏み消して
足元においてあった
カバンを手に取った
非常口階段から
マンションの棟内に
戻ろうと
歩を進めようとした瞬間
階段を下から
そして上から
ガンガンガンガンガンガンガン
けたたましい音を鳴り響かせながら
誰かが猛スピードで上ってくる
そして誰かが猛スピードで下りてくる
階段は鉄製で音が良く響く
しかし下の道を歩く人も
向かいのビルの人も
こちらを一瞥するようなそぶりはない
まるで階段だけが
他の世界から切り離され
閉じ込められているみたいだ
棟内に入るための
ドアノブはなぜか回らず
俺は階段に閉じ込められた
ガンガンガンガンガンガンガン
ダンダンダンダンダン
一歩一歩力強く踏みしめ
駆け上がってくるようだ
音が近づいてきた
タンタン
音が弱く近くなった
すぐ真上に
すぐ真下にいる
下へ続く階段から
ボサボサの髪の毛が
そして上へ続く階段から
薄汚れた足が
見えた
ひっ!
俺はドアを背に
あとずさった
しかしそこにあるはずのドアはなく
俺は5階から真逆さまに
地面に叩きつけられた
・・ころすよ・・。。

引用元
オラ右衛門デスガナニカ?
リング


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