Sunday, August 06, 2006

poor think

男は
バスルームにいた

バスルームといっても
豪勢なものじゃない

カビの生えた
シャワーカーテン
噎せ返るような暑さのせいで
石鹸カスやこびりついた
正体不明の汚れが
アンモニア臭のように
鼻をとめどなく刺激する

男は
それを
引きずってきて
ドサっと
浴槽の床に乱暴に投げ捨てた

床も狭いので
それは
多少折れ曲がって
そこにいた

男はバスルームを出て
リビングにきた

冷蔵庫から
粗末な安物の
缶ビールを取り出して
その
ヌルっとした
溜まりを
見ないようにして
ソファに座った

ビールを一口飲むが
気分が悪くなったので
まだほぼ満杯にある
缶を無造作に床に投げ捨てた

男はシャツを脱ぎ捨て
ソファに軽く横になり
思い出し始めた



夏の夜
男は仕事と呼べるかどうか定かではないが
生計を立てることの足しにしている事を
して帰ってきた
(無論、なにをしてきたのかは
皆さんのご想像にお任せする)

両手に荷物はなく
錆びた鍵をGパンの腰にぶら下げ
ポケットには携帯
とわずかばかりの金が入った
財布を持っていた

男は
携帯を広げ
電話をするでもなく
街中で忙しくメールを打っている
女性のように激しく
指を動かすわけでもなく
ただ淡々と
なにかのページを
読んでいるようだった

携帯の淡い光に誘われた
小さい虫が
よってくる

払っても
払っても
引っ付いてくるので
男は聊か億劫になり


いつしか
追い払うのをやめて
ページを目で追うことに没頭した

古びた
マンション(アパートと呼ぶべきが
正しいのかもしれないが)
の前に来ると
裏手に回り

朽ち、今にも
落ちそうな外側の階段を
一段、また一段と
上りはじめた


浮浪者や
ヤクの売人
美人局
など
絵に描いたような
「当たり前」が溢れている
街だ

当然
男の上っている
階段の下の
薄暗がりにも
それはいて

「早いのあるよ」

したからかすれた声が聞こえた

男は朽ちて空いたであろう
隙間から下を覗き込むと
ひげを生やし
頭にターバン(バンダナの類かもしれないが)
を巻いた
60は過ぎているであろう
老人と目が合った

「今日は疲れているから」

男は視線をはずすことなく
老人につげると

「そうかい」

老人はそういって
視線をはずし
ぶつぶつとつぶやき始めた

男は朽ちた階段を
右手に携帯を
左手で軽く虫を追い払いながら

今気づけば
男は口元に
折れ曲がった
タバコをくわえていた

おそらく尻ポケットに
入れて座ったために
粗末な箱ごと
ひしゃげてしまったんだろう

男はタバコを吸うでもなく
ただ灰になっていく
姿を眺めているようだった

それくらい
男はタバコに関心を
寄せていない様子なので
私も良く見なければ
気づかないほどだった

男は
部屋に着くと
錆びた鍵を
差込み
部屋に入った

すると
部屋で
女が死んでいた

顔見知りか

男の様子から
顔見知りではないかもしれない

この古いアパートだ
ラリったやつが
どこかの
ベランダ伝いに
うちにきて
そこで絶命してもおかしくない

引きずろうとすると
女はまだ生きていた

「タスケテ、、、」

ヤクの切れた反動か
全身が痙攣している

変にかくまうのも
面倒だ

殺人犯と
思われても困る

男は
ある考えを
思いついて
台所に行った



男は手に
果物ナイフを持って
(恐らくこの男は料理をしないので
出刃包丁とかはもっていないのだろう)
女の首を刺した

念のため
心臓も

刃をたてにすると
あばらにあたって
硬くて入らないので

刃を寝かせて
何度か刺した

顔は傷つけてないので
顔を見やると
上玉だった

売春などすりゃ
食っていける顔をしている

男は
死姦しようとしたが
気が乗らなかったので

やめた

男はバスルームで準備を
はじめた



男はそれを引きずって
バスルームの床に乱暴に投げ捨てた

・・・


暑さと虫の羽音で
目が覚めた

さっさとはじめるか

撒き散らしたビールが暑さで
ものすごく臭い

もう二度と
安物は買わん
と男は誰に言うでもなく
つぶやいた

男は
バスルームで
女の足の指10本を
果物ナイフで切り落とした

栄養失調だったのか
かなりやせこけている

刃こぼれをするかもしれないので
男は
砥石を用意していた
(料理もしないのに
まるでこういう事態が
起こることを予め知っていたみたいだ)

男は
ミキサーのなかの
8のラインまで
シャワーから
水を入れた

シャワーは温度調節していないのに
熱く温いお湯が出る
貯水槽に
なにかあるんじゃないか

ここの水は臭すぎる

そこまで入れたら
それらを
ミキサーにいれ

まわした

みるみる
赤く染まっていく


爪などが
気がかりだったが
栄養失調(これは男の推測)
だったために
全て水に混ざった

1分強まわして
ミキサーを止め
バスルームの大きな排水溝の
ふたをはずして
それをながした

詰まる様子は
微塵も
ない

男は
休む間もなく
女の
両手を
見た






部屋にいるのは
男と女だった欠片

その最後の欠片を含んだ
水は今流された

排水溝は
ゴボゴボゴボと
音を立てて

女を飲み込んだ


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