Saturday, July 29, 2006

write a poor mail

僕は
都立に通う
中学三年生

僕に父親はいなくて
母親と二人三脚でがんばってきた

祖母や祖父も
もう他界してしまって

今は母と僕と父方の祖父で
暮らしている

祖父はとても健康で
人望も厚く
母と仲もよく
僕にも優しくしてくれた

健康な体を生かして
70を超えても
働いていて
小さい頃はよく
おもちゃを母に内緒で
買ってくれた

結局バレて
二人とも怒られてたっけ

中学になり
いわゆる
かぎっ子になった僕は
携帯電話を持つことになった

僕が小学生の頃から
祖父も母も携帯を持っていて
夜ご飯をどうするかなど
連絡を取っていたらしい

中学にもなれば
一人でたいていの事はできる

僕は
友達とのメールや電話を楽しみ
家族からの
連絡なんておろそかになっていた

「もう、夜ご飯作っちゃったじゃない!」
母と連絡の行き違いで
怒鳴られる事もよくあった

「うるさいな、そんなことで
連絡しないでよ!」
僕は家族からの連絡を
疎ましく思っていた

おじいちゃんは
電話だけ出来る携帯を
持っていて
自分が連絡をすれば
僕が連絡をすると思ったんだろう

おじいちゃんは
メールが出来る
携帯を新しく買った

その夜
「ちょっとケン坊や
使い方を教えてくれんかね」
とおじいちゃんは
僕に言った

好きな子とのメールが
楽しくて
そんなことにかまってられなくて
僕は
携帯電話の
分厚い
説明書の
メールの部分を開いて
机にドサッと置いて
「ここ見ればわかるから」
と言った

おじいちゃんは
「わしは機械が苦手なんじゃよ
ケン坊ちょっとだけ教えてくれんかね?」
と言って
老眼鏡を小さく動かした

「見ればわかるから」
と僕は雑に返事をして
僕はおじいちゃんの部屋を出た


しばらく
僕はおじいちゃんが
メールを練習してる事を
忘れていた


それから数ヵ月後
ニュースで
ひっきりなしに
大型台風接近の文字が並ぶ日の夜

「けんぼう、どこにいる かあさんがまつてるよ」
と知らないアドレスから
メールが来た

うっとうしくて
僕は
無視していた

その数分後また
メールが来た

「けんぼう、あめつよくなるそうだよ かえつてらつしやい」

僕の事を
ケン坊って呼ぶのは
おじいちゃんしかいないと思い
僕は

「今、学校で居残りしてるんだよね
傘無くて友達の家に寄って傘借りて帰る」

とそっけない
返信をした

数分後

「けんぼう、わしがむかえにいく こうもんでまつてなさい」
とメールが来た

本当は
友達の家で
ゲームをして過ごしていた

「いいよ、自分で帰れる」
と返信をして

僕は携帯の電源を切った
新作のゲームに集中したかったからだ


一時間がたった頃
電源を入れた瞬間
電話が入った

母さんからだった

「あんた!!どこにいるの!!
おじいちゃんがあんたを迎えに行ったまま
帰ってこないのよ!!あんたなんで電源切れてるのよ!
すぐにおじいちゃん探しに行って!私も今から学校に行くわ!」

母の声は荒々しく切羽詰っているようだった
友達に別れを告げ
学校の校門に向かった

雨が相当強い
傘を差しても
全身がぬれていくのがわかる
校門近くにいくと
赤色灯がクルクルと回っていた

そこにいたのは
全身カッパの警察官や
近所の川の堤防が決壊する前に
土嚢を積んでいた人
そして
フロント部分が捻じ曲がった
車と見慣れた服を着た
おじいちゃんだった

おじいちゃんは
もう、ずぶぬれだった


おじいちゃんはストレッチャーに
寝かされ救急車にのせられた

あたりは
雨のせいで
証拠品などが流れていってしまい
警察官が右往左往していた

赤く染まった水も
排水溝へと流れていった

しばらくすると
何も無かったかのように
あたりの水は
透明になった

二本大き目の傘が近くに落ちていた
一本は
見るも無残に
捻じ曲がっていた

雨は依然強い





僕は病院の
待合室で
メールのチェックをしようと思い

外に出て
センター問い合わせをした

「新着メールが1件あります」

開くと
「けんぼう、もうすぐつくから またせてごめんね」


僕は
泪が止まらなかった

謝らなきゃいけないのは
僕なのに

うそついた
僕なのに

どうして

どうして

あんなに
雨が強いのに
わざわざ家から来てくれて

ごめんなさい

おじいちゃん
目を開けて

メールの使い方
教えるよ?

絵文字も教えるよ

小文字にするやりかたも
おしえてあげる

漢字変換も
教えるよ

アドレスも変えよ?

おじいちゃんが
覚えやすい名前にしよ?

電話帳の
登録の仕方も
全部教えてあげる

だからお願い
もう一度
おじいちゃんと
話をさせて


数日後
おじいちゃんは
帰らぬ人となった

僕は最後

おじいちゃんと話したのはいつだろう?

あんな
メールが最後だなんて
いやだよ

告別式の後
一人部屋に戻って
電気もつけずに
いると

おじいちゃんがひょっこり現れて
「ケン坊、目が悪くなるよ
電気をつけなさい」
っていってくれる気がして

でも、いつまでたっても
部屋は暗いままだった

おじいちゃんの
携帯は
解約される事となった

その前に
写真や
メールを見ておきたくて

渡す前に
見た

そうすると

未送信メールに
たくさん
メールがあった


「あいうえおかきくけこさしすせ・・・・」

「けん棒、」

「けん帽、」

一番最新のメールは
「けんぼう、きょうのがっこうはたのしかったかい?」



「なんだよ、、、
小文字使えるんじゃん、、、
は、、はてなマークも、、、
つかいこなせてるじゃん、、、、」

日付を見ると
あの事故があった日の
お昼三時ごろ
ちょうど学校が終わったときだった

予想以上に雨が強くなって
急いで迎えに行かなきゃ!
って
おじいちゃんは思ったのかな?

だから
あんな拙いメールになっちゃったのかな

ねぇ
おじいちゃん

拙くてもいいよ

ミス変換しててもいいよ

おじいちゃんと
話がしたいよ

メールでも
電話でも
向かい合っても

おじいちゃん

もう一度
会いたいよ


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